2011年03月19日

地震被災地で注意する水・感染症

登山医学会理事増山茂医師、堀井昌子医師からの提言

3月11日に東北地方を中心に発生した巨大地震は未曽有の災害となった。震災後に発生する可能性のある感染症について簡単に説明する。
地震や津波の直後は、外傷が問題となる。倒壊流出した家屋や車両などによる。この傷口から侵入する感染症にまずは注意が必要である。こうした感染症は傷をこまめに消毒すること、抗菌薬で対処することで治療可能なものが多いが、「汚れた水」しか得られないことも多いはずだ。完全な消毒は難しいという前提で対処しよう。

「汚れた水」が明らかに生活排水を含んでいると思われるときは煮沸の手段がない限り飲まない。緊急避難的に化学的な消毒の方法があり、手法としては、水1リットルに塩素剤(次亜塩素酸ナトリウム6%の製品。「ピューラックス」)を3滴入れ、よくかきまぜる。30分ほど放置してから使う。消毒した水はその旨表示して飲料のみに使用する。ノロウイルスなどの感染性胃腸炎に対する注意も大切です。

また、心配すべきは破傷風でありワクチンによる予防を要する。大きな怪我を負った被災者は、救出後早めに医療機関で処置を受けていただきたい。

震災後1週間程度してから発生するのが、インフルエンザや感冒などの呼吸器感染症である。インフルエンザについては3月になり流行が終息しつつあるが、避難所のように集団生活する場所では新たな流行が発生する。とくに被災者は栄養状態の悪化などで抵抗力が低下していることが多く、呼吸器感染症にかかりやすい状態になっている。避難所では手洗いやウガイを励行するとともに、マスクの着
用も必要に応じて実施すべきである。

この時期に発生するもう一つの感染症として経口感染症がある。日本のように衛生環境が整備された国であっても、震災後には飲料水や食品が汚染されるなどして、食中毒や下痢症が多くなる。とくにこの時期はノロウイルスが流行しやすい季節であり、水や食品は加熱したものを摂取した方がいいだろう。避難所で飲食物を提供する自治体なども、この点には注意していただきたい。

震災後数カ月を経過した時点で流行する感染症として、発展途上国では蚊に媒介されるマラリアやデング熱がある。これは、水溜りで蚊が繁殖することに由来する。ただし、日本国内では元々患者が少ないため、こうした昆虫媒介の感染症が震災後に増加する可能性は低いと考える。なお、ゴミ処理の停滞でネズミの数が増えると、それに媒介されるレプトスピラ症やハンタウイルス感染症などが発生する可能性もある。いずれにしても、震災後は衛生環境の整備に力を注ぐとともに、年単位にわたりに感染症の発生を監視する必要があるだろう。
posted by 事務局 at 05:40| Comment(0) | 感染症
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